逆行時代

再燃している、るろ剣SQ最新号を読んでの個人的所感です。
少年誌と青年誌では全く違う環境なのだと改めて思い知らされるばかりでした。
なるほどなるほど、緋村剣心という男が地を出してきた、と。
シモーヌは薫殿が大好きで、薫殿に対し、年相応であってほしいと、常々思っています。
怒ったり泣いたり笑ったり、17歳の女の子そのままでいていいじゃない。
ですが彼女は、母親になりました。母親にとっていちばん大事なのは我が子なのです。
だから薫殿は剣心を引き留めないし、剣路を危険な場所に行かせるわけにはいきません。
あの家族写真は、自分達が帰りを待っていると、声のない言葉だったのだと思います。なんと健気で愛おしい女性だろうと、ますます好きになります。
でもねー! 薫殿は【新時代】を生きているの!! 年代逆戻りしてない!? 三歩後ろを歩くなんてくそくらえ!!
時代考証ガーと噛みつく気は毛頭ありませんし、藤沢周平さんを深く敬愛してやまない身です。けれど剣心は幕末の動乱を生きてきましたから、こんな齟齬が生まれるのだと、悔しくなるばかりです。
年の差ありすぎ事例の見本みたいです。やっぱり剣心が苦手です。
だから、やさしいだけで若い女の子を娶った奴は嫌いなんだ。
薫殿が剣心を好きになったんじゃなくて、剣心が薫殿を必要とするようになってしまったのが運の尽き。
志々雄様と戦った時の剣心のほうがかっこよかったよ…。
薫殿が待ってるから生きて帰るって、あの時がいちばんかっこよかった。ほんと、ほんとに。
それでも薫殿が剣心と夫婦になって、剣薫が大正義なのは承知しています。
縁薫の可能性は、縁が救われ薫殿も素のままでいられるあったかもしれない未来のことです。
断然後者のほうが好きなのは、薫殿が都合の良い添え物にされることへの反発心になりません。
もちろん縁と薫殿に幸せになってほしい、が大前提ですけれども。
縁が休める膝は、薫殿しか持っていない。薫殿が思ったことをはっきり言えるのも、縁しかいないのです。

目的であった薫殿と父を探す旅は、一変して再び剣心達を闘いの場に引き戻しました。
流石展開が上手いなあと、あまりマンガを嗜まない立場でも思います。
北海道編で最初から描かれているとおり、緋村剣心はすでに戦う力を失いつつあります。
物心ついたときから刀を握っていた少年が、壮年となり、己の芯であった力を失くす。
その恐怖を抑え、剣心は最期の戦いに赴いたのです。
モノローグが少なくなっていったのは、主人公としては、恐怖や喪失感を出すわけにはいかないから。
そのせいで、剣心には余裕が無く、妻や子供へ向ける気持ちも、そぞろになりがちなわけです。
そんなのかっこ悪いですものね、作者さま的には。
マンガの展開で性格変える作者さまだとわかっていても、もどかしくてなりませんが…。
新キャラ出すのは、まだまだ戦いが控えているアピールなのでしょうが、それ余計に剣心が戦う意味薄くならない? って心配になります。左之助の助けがあって…って書くとなんか介護みたいですが…わざわざ齋藤さんを戦えなくした意味って?? 場所分けてどうすんの?? 札幌は役所以外畑ばっかりで小樽は漁場だけよ?? と、物語の着地点をどうしたいのかわからなくなります。
現状の戦力で対処しろ、という命令があるからこそ新キャラの伏線なのでしょうが…。
ううーん、亜組三人は薫殿の懐の深さを理解してないし…。
それでも、薫殿と剣路を守ってくれると信じたいです。薫殿は我が子を守るために自分の身を防具にしてしまうから。
剣路くんも、一応は父親を気遣う気持ちはまだあってよかったです。
和紙だ、和紙を濡らしてかぶせろ! と正直思ったのは内緒です。
薫殿が、やさしく看病している姿は、なんとも涙がでるほどやさしい世界でした。
剣路がお母さん大好きになるのも仕方ないと思うほど。いつだってやさしい母が傍にいてくれるしあわせは何にも代えがたいものです。
大人になると、世界一大変なのは母親だったと、ようやくわかるものですから。


  • 2019.12.05