石蕗を手折る

縁薫アンソロ【禁書】に寄稿させていただいたお話です。
再録にあたり、一部加筆修正しています。主にすけべ部分とかです。へへへ…。
とってもすてきなアンソロに参加させていただきありがとうございました!
初出稿

縁が薫殿の声だけは聞いているのに、いったい二人の間になにがあったのか、微に入り細に入って詳しく知りたいと熱望するばかりです。
あの、その、いわゆる男女の一線を踏んだり踏まなかったりとか、なかったりあったりするんじゃないかなって。
でもきっとその前に、ややとげとげしい青年(に戻った)の縁とほがらかな少女薫殿の、人同士の、ごく当たり前のやりとりがあったと思うのです。
縁の苦しむ姿を見てしまった薫殿が、この人を苦しめるものはなんだろうと、考えてしまったのではないかなあって。
彼の中にある怒りを、時間さえあれば、薫殿なら気付いてくれたかもしれません。
二人しかいないお屋敷で、薫殿は縁をしげしげと観察する暇があったでしょうし、それは縁も同じでした。
縁の常識から外れていて、鬱陶しいほどに見てくる薫殿を、どんな風に受けとめていたのか。
二人は案外に上手い具合に過ごせていたんじゃないかなあと、ついつい妄想してしまいます。
縁が薫殿を目の届く範囲に留めておくの、ほんっとやばいなって。
つまり薫殿を自分の近くに置いとくのがいちばん安全という認識だってことなのですもの。
仇討ちやら個人的感情やら複雑に絡まっていますが、突き詰めていくと、薫殿を傷付けたいという意思が、縁にはなかった。
説明したくないし面倒だったからとか、こまけぇこたあいいじゃありませんか。
あの夏に、たしかに縁と薫殿が共に過ごした穏やかな時間があった。
縁と薫殿が普段自分に課しているものを脱ぐことができて、ちょっと真面目に話をしたりもして、大半は素のままにやいやい言い合っていたりしたのではないかと、夢を見てしまいます。
はあ〜縁薫結婚しねえかな〜。ガハハ!


薫殿がお父上の教えを誇りにしているのは、外野が口を挟みようがない事実です。
かわいらしく小柄な娘さんに、まだまだ子供の薫殿に、奥義含め剣術を教えたお父上の心情は、どんなものだったのか。たぶんおそらく、単純に継いでほしいだけでは、なかったと思うのです。


  • 2021.07.22